こぎん刺しのテディベア作家 kogin*bear style こひろ

青森県津軽地域の こぎん刺しを使ったテディベア作家のブログ。「充実した暮らしを楽しむ大人の心の友達に、伝統模様に祈りをこめて、こぎん刺しを未来へ」。販売先・イベント出展情報・問合せ先は各ブログ記事末尾をご覧ください。

石段の上の、陽炎

不意に呼ばれた名前は、旧姓。
結婚して随分経っていたから、一瞬、自分のことだと分からなかった。

いつものように石段を登ったその先の、白い車。すぐそばに立つ、スーツ姿の男性(ひと)。
その声で、その呼び方で、閃くように遡る記憶。まさかと思うけど間違いない。高校で1年だけ同じクラスだった彼。
とは言っても、恋人だったわけではもちろんなく、友達と言うほど親しくもない。純粋に同級生だった。表面上は。

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「よく覚えてたね。私、あんまりみんなの印象に残ってないみたいだったから。
卒業してすぐ地元離れて、戻ってないからクラス会とかも行ってないし」
「変わってないよ。でも似てる人かもしれないから、名前呼んでみた。
あまりいない名字だから」
「うん今はね、違う名字だから。呼ばれたの久々」
「結婚したのか」

 

陽が長くなりかかる季節。背中の上の髪を風が吹き上げ、耳元で木々の葉が騒めく。


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あの頃の彼は、すべてに挑むような瞳をしていた。
周りに受け容れられないこと、うまく生きられないことに傷つき、それでも、己の魂に触れてくれる人を心の底から望んでいるような。

互いの感触を求め、手を伸ばすように、向き合っていった。


近づきながらも拒まれる。
正直どう接していいかわからなかった。けれど離れることはできなかった。どんなにすれ違い、傷付き、途方に暮れても。
それは彼も同じだったように、思う。

 

「お前は俺とは生きる世界が違う」
何度も言われた。そのたびに私たちを隔てる壁を感じた。けれどいつもその壁越しに、そばに来てほしい、俺に触れて欲しいと、溢れる感情が伝わってくるようだった。


今なら、少しは理解できるような気がする。

そんな思いで今、彼の元へ歩み寄る。ヒールの立てる音に重なる、鼓動。

そばで見上げた彼の顔。目にかかる長さの、黒い髪もあの頃と同じ。彼の奥二重の茶色の瞳。ちゃんと目を見たことがなかった気がする。あの時は人と目を合わせることが恥ずかしかったのだけど。

 

「やっぱり変わってないな、お前」
「そう? 昔もあまり話してなかったから。覚えてないと思ってた」
「お前は忘れてなかっただろう」
「そうだけど、会えるとは思ってなかった」
「ずっと、関わったらいけないような気がしてた。俺とは住む世界が違うように感じてたから。
俺が関わることで、お前を穢しそうで。
だけどどこか、同じ傷を抱えているような気がして放っておけなかった。
誰かに守られないと生きていけないようなのに、どんなに傷ついても、必死で自分の足で、自分の行きたい方へ歩こうとしていた」

 

気づいていたんだ。

私も、貴方が他の人から悪く言われたり、馬鹿にされたりしてること、気づいてた。あいつとは関わらない方がいいと言われたこともあった。どうしてもそれは理解できなかった。

何かしてあげたくても、どうしていいか分からなかった。

「ごめん。多分あの時、もっとちゃんとあなたに向き合っていたらと思う。
なんか、自分のことをわかってほしいというそれだけで。押し付けてたところもあったかもしれない」
「気にしなくていい」

「今…結婚してるの?」

それは不意に湧いた疑問だった。
「一度結婚して、離婚した。今は一人。

お前はたぶん幸せなんだろう? 今は」
「うん」

 

突然の抱擁に気づいたら、唇が触れていた。柔らかく繊細で、幻のように、一瞬の。

指先でそっと、唇に触る。

軽く触れあっただけで、終わるのだろうか。

重ねる内に、強く深く、絡み合って離れられなくなりそうで。

 

また、会いに来るから。

彼が残した言葉が、耳の奥から消えない。


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おはようございます。
こぎん刺しのテディベア、ベアグッズ製作の、kogin*bear style こひろです。

行ったことのある実在する風景で、この景色に合う話を考えていたらこうなりました。

 

今日も読んでくださり、ありがとうございます。


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