私自身が経験した、一度違和感を持ってしまった体の性と心の性が、再び一致するまでの話。
前編はこちら↓から。
【続き】
高校を卒業してからは、ほぼ男装のようにして過ごした。スカートははかず、黒のシャツにパンツなど（実際、黒は好きな色だった）。それでも、長い髪はどうしても切れなかったし、リボンを結ぶ髪型も変えたくなかった。
ビジュアル系やゴスパンクが好きだった事もあって中性的な雰囲気にしていた。
恋人（男性）はずっといたけど、本当の姿を見せる事ができなかった。性欲の対象にされているだけなのを感じたから。
自分が女性であることを否定したくなった原因は過去の恋愛にもあると思う。
私がどんな人間であっても、どんな気持ちを抱えていても関係ないのではないか。
ただ、彼氏と彼女らしきことができればいい。つまりは体のつながりが持てればどんな女性でもいいのではないか。たまたま相手になったのが私だっただけで。
そんなわけで過去の恋人の前では、女性でいることが違和感があって、怖かった。
唯一人、この人の前でなら元の自分に戻れる、と感じた人が、今の夫。
初めてか何度目かのデートで、自然にブラウスにフレアスカートで出かけたところ、何の違和感もなく褒めてくれた。それ以外にも、たぶんこの人ならうまくいくと思えるような事があったように記憶している。
一緒に過ごすうちに、今まで無意識に避けていたような洋服を選ぶようになり、気がついたらクローゼットは好きな服で埋まっていた。自分はもう仕事もしている大人。いつまでも親の思惑の下で生きる必要はないし、陰口を言う人もさすがにいない。もう、したいようにしていいんじゃないか、と、良い意味で人目を気にしなくなった。
今は本当に自分が好きなものしか身につけたくないと思っている。
これまで好きだけど避けていた色合いにも挑戦したいし、勝手に制限をかけていた分、もっと自由に着たいものを着たい。
年齢的な制約はあるかもしれないけど、今の自分に合うものを選べば良いと思う。
好きな服を着るために、美容とか体型維持にも気を遣うし、言動もみっともないことや、だらしないことはしない。
男らしさ女らしさは、見た目だけではないと思う。私の性格が女性らしいかと言えば多分そうではない。
ただ、人それぞれであって良いけど、やはり見た目は大事。よく「内面さえ良ければ外見はこだわらなくて良い」と言うけど、それは違うと思う。外見を整えれば、内面もついてくるもの。
自分の心に正直に生きることは、自分を肯定して大切にすることなんだと気づいた。
(了)
この文のタイトルを「踏み潰されなかった只の蟻」としたのは、
私自身がどちらの場合でも、周囲と対立することになっても、自分の本心に正直にいたいと思ってきたから。世界から見たら蟻のようにどうでもいい存在でも、意思のまま生きていたかったし、そうしてきた。
またこういうことならありがちではないかと思う人もいるかもしれない。
でも、自分の本当の意思に反して、逆の性として過ごすことを強いられることは大きな違和感を持つものだと思う。
私の場合は、女性であることを自分で否定した時も違和感はずっとあった。
考え出すとよくわからないけれど。
何にせよ、最後まで読んでくださりありがとうございます。
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